遊牧民フン族の王~オペラ・アッティラ~

昨日の僕のブログで登場した、アメリカの人気オペラ歌手、サミュエル・レイミー。散々な結果に終わった1992年のスカラ座シーズン・オープニングの「ドン・カルロ」公演で、唯一人喝采を浴びたお話をしました。
今日は、もう少しスカラ座でのレイミーの話を付け加えさせて下さい。
レイミーはこの時期スカラ座をはじめ、イタリア国内のメジャー・オペラ・ハウスにたびたび出演していた時期で、どこへ行っても大成功、押しも押されぬ最高のバス歌手としての地位を築き上げました。
「ドン・カルロ」のフィリッポ国王役での大成功を収めた、前のシーズンにもスカラ座でヴェルディのオペラ「アッティラ」のタイトルロールを歌って輝かしい大成功を収めていました(やはりリッカルド・ムーティ指揮)。
「アッティラ」は1846年ヴェネツィア・フェニーチェ座で初演されたヴェルディ初期のオペラで、現在はそれほど上演されるオペラではありません。
アッティラはバス歌手にとってかなりの難役でなので、特にスカラ座のような伝統がある大劇場ではおいそれと上演する訳には、いかないのです。
 
ここでアッティラとは何者なのか、非常に簡単に説明すると、アッティラは395年に生まれた、遊牧民フン族の長、445年には単独で王になりました。
フン族は、非インドヨーロッパ系遊牧民として、はじめてヨーロッパに侵入した民族ですが、ローマ帝国の強い影響下にあったヨーロッパ世界では、たび重なるフン族の侵入に大いに恐れていました。
とりわけ疲れを知らないフン族の騎兵を率いるアッティラは、災いそのものとまでみなされていたようです。
←Attila
サミュエル・レイミーの歌ったアッティラは大変素晴らしいものでした。蛮族の長、という野性味とか荒々しさというよりも、彼の現代的でシャープ、パワフルで大変切れのある歌唱が、ストレートに聴衆の心を掴み大成功!
僕もめったに上演されない「アッティラ」を劇場で聴いたのがこの時が初めてで、とても楽しむ事が出来ました。
ただ残念なことに、オダベッラ役を歌ったソプラノ、チェリル・ストゥーダーが、このヴェルディのドラマティック・ソプラノパートにはまったく合わず、違和感を聴衆に与えてしまって、大ブーイングを浴びてしまいました。
レイミーに対するブラヴォーの大歓声と、ストゥーダーへの拒絶反応でスカラ座は異様な雰囲気に‥
このコントラストが、ますますレイミーの大成功を際立たせました。
イタリア人の聴衆の感情表現過多は歌手にとっては厄介なもので、成功した時はうれしさが何倍にも感じられますが、反対に失敗した歌手にとっては物凄いダメージになることもあります。
事実、一昔前のスペインのプリマドンナ、カバリエはオペラ「アンナ・ボレーナ」での大失敗後、「もうスカラ座では歌わない」と言って、スカラ座のオペラの舞台では二度と歌うことはありませんでした。
 
この聴衆の厳しい反応がスカラ座のレベルを保っているのかもしてませんが、度を過ぎることはいけないことです。終いには、スカラ座で歌う歌手がいなくなってしまう事でしょう。
幸いなことに、今は聴衆も一昔よりだいぶ大人しくなってきた様に思われますが‥
 
 
               人気Blogランキングへ
 
Advertisements

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out / Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out / Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out / Change )

Google+ photo

You are commenting using your Google+ account. Log Out / Change )

Connecting to %s